触れると吸い付くようなサテン生地の手触りと、抱き上げた瞬間に感じるずっしりとした重み。「レンガを絹で包んだような猫(A brick wrapped in silk)」と称される独特のボディを持つのが「バーミーズ(Burmese)」です。
かつてミャンマー(旧ビルマ)の寺院で大切に守られていた神聖な猫をルーツに持ち、金貨のように輝く丸いイエローゴールドの瞳と、上品なセーブル(濃褐色)の毛色がトレードマーク。気質は非常に温厚かつ社交的で、猫らしい気まぐれさを忘れさせるほど人間が大好きな「犬のような甘えん坊」として知られています。
この記事では、バーミーズの歴史(母猫ウォンマウの伝説)や外見の特徴(アメリカンとヨーロピアンの2つの系統)、人懐っこい性格、平均寿命、注意したい病気(低カリウム血症や糖尿病など)、元気に暮らすための飼育のコツまで詳しく解説します。
バーミーズの基本データ

| 項目 | 詳細データ |
|---|---|
| 原産国 | ミャンマー(旧ビルマ)/ アメリカ合衆国・イギリス |
| 体型タイプ | セミコビー(丸みがあり筋肉質で骨太、抱くとずっしり重い体型) |
| 体重の目安 | オス:約4.0kg〜6.0kg / メス:約3.0kg〜4.5kg |
| 平均寿命 | 約14歳〜18歳(純血種の中でもトップクラスの長寿) |
| 被毛タイプ | 短毛種(アンダーコートが極めて薄く、サテンのような光沢を持つ極短毛) |
| 鳴き声の大きさ | 小さめ〜普通(穏やかで低めのハスキーボイス、シャムより静か) |
| 飼いやすさ目安 | ★★★★★(人懐っこく攻撃性ゼロ。抜け毛も少ないが寂しがり屋) |
1. バーミーズの特徴と魅力
「レンガを包んだ絹」と称される極上の手触りと重厚感
バーミーズの最大の特徴は、サテンや上質なシルクに例えられる極上のショートコートです。下毛(アンダーコート)がほとんどなく、毛が皮膚にぴったりと密着しているため、光を浴びると濡れたような上品な光沢を放ちます。
外見は中型で引き締まって見えますが、骨密度が高く筋肉が非常に発達しているため、抱き上げると見た目の印象を遥かに超えるずっしりとした重みを感じられます。
金貨のように輝く瞳と丸みのある顔立ち
頭部は丸みを帯びており、耳の先端も丸く、鼻筋には愛らしいくぼみ(ブレイク)があります。
瞳は丸く大きく、色は鮮やかなイエローから琥珀色(ゴールド〜カッパー)に輝きます。深く温かみのある瞳で見つめられると、誰しも心を奪われてしまいます。
「アメリカン」と「ヨーロピアン」の2大系統
バーミーズには、ブリーディングの歴史の違いによって2つの異なるスタイルが存在します。
- アメリカン・バーミーズ: 丸顔でマズルが短く、全体的に重心が低いコビー寄りの愛嬌あるテディベアスタイル。毛色はセーブル(濃茶)、シャンパン、ブルー、プラチナの4色が基本。
- ヨーロピアン・バーミーズ(フォーリン・バーミーズ): イギリスを中心に発展。シャムの影響を残したややスレンダーで知的な逆三角形の顔立ち。赤系やクリーム、トーティ(サビ柄)など多彩な毛色が認められています。
ルーツと歴史:1頭の茶色い雌猫「ウォンマウ」から始まった奇跡
現代のすべてのバーミーズは、1930年にアメリカ海軍の軍医ジョセフ・トンプソン博士がビルマ(現ミャンマー)からサンフランシスコへ持ち帰った1頭の濃褐色の雌猫「ウォンマウ(Wong Mau)」に端を発します。
トンプソン博士は遺伝学者たちの協力を得て、ウォンマウをシールポイントのシャム猫と計画的に交配させました。その結果、濃褐色の単色被毛を持つ子猫が生まれ、これが独自の劣性遺伝子(セピア遺伝子 / バーミーズ遺伝子)による新種であることが証明されました。
1936年にアメリカのCFAで公認され、その後イギリスをはじめ世界中に広まり、今日では多くのハイブリッド種(トンキニーズやボンベイ)の親としても重宝されています。
2. バーミーズの性格と飼いやすさ
「犬の着ぐるみを着た猫」!超フレンドリーな甘えん坊
バーミーズは、全猫種の中でもトップクラスに社交的で人懐っこい性格です。
飼い主の帰宅を玄関で出迎え、足元をすり抜けながら「待ってたよ!」と嬉しそうに鳴き声をあげます。座ればすかさず膝や胸の上に乗ってゴロゴロと喉を鳴らし、飼い主が移動すればどこへでもトコトコとついて歩きます。
人間への信頼が厚く、抱っこされたり撫でられたりすることが大好きで、小さな子どもや初対面の来客に対しても怖がることなく堂々と挨拶に行くフレンドリーさを持っています。
賢くユーモアあふれる知性派
好奇心が強く知能が高いため、退屈を嫌います。ボールやおもちゃを投げると全力疾走で追いかけ、咥えて手元まで戻ってくる「取ってこい遊び」を好む個体がたくさんいます。手先が器用で、ドアを開けたり、引き出しからお気に入りのおもちゃを取り出したりと、コミカルな知恵で家族を笑顔にしてくれます。
鳴き声はシャムに比べて柔らかく控えめで、穏やかに相づちを打つように鳴くため、集合住宅でも周囲を気にせず暮らせます。
オスとメスの性格の違い
- オス: メスよりも一段と甘えん坊で天真爛漫。飼い主にベタベタと密着し、全身で愛情をアピールしてくる男の子が多いです。
- メス: 愛情深いですが、オスに比べると賢く自立した面を持ちます。家庭内を取り仕切る小さな女王様のような気品と落ち着きがあります。
初心者や一人暮らし、子供・先住ペットとの相性
- 初心者・ファミリー: 攻撃性が皆無で我慢強いため、初めて猫を飼う方や小さな子どものいる家庭に理想的な猫種です。
- 一人暮らし: 非常に寂しがり屋で孤独を嫌うため、長時間の留守番が日常的に続く環境では分離不安症になりやすいです。
- 多頭飼い: 協調性が極めて高く、他の猫や犬とも争わずにすぐ親友になれる平和主義者です。
3. バーミーズの平均寿命とかかりやすい病気
バーミーズの平均寿命は約14歳〜18歳です。大切に飼育された個体では20歳を超えることも珍しくなく、純血猫の中ではトップクラスの長寿を誇ります。
しかし、東南アジア系猫種特有の代謝異常や遺伝性疾患には注意が必要です。
注意したい病気と健康トラブル
- 低カリウム血症(家族性低カリウム性多発筋症):
血液中のカリウム濃度が低下し、全身の筋力が低下する遺伝性疾患です。首をだらんと垂らして持ち上げられなくなったり、後肢がふらついて歩行困難になったりします。遺伝子検査で事前に保因の有無が分かります。 - 糖尿病:
食欲旺盛で太りやすい体質のため、中年期以降の肥満からインスリン抵抗性を引き起こし、糖尿病を発症しやすい傾向があります。 - 尿路結石症(FLUTD):
運動量が落ち着く冬場や飲水量が不足した際に、ストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石ができやすくなります。 - 緑内障・眼疾患:
眼圧が上昇して痛みを伴い、視力障害を引き起こす緑内障の素因を持つ系統があります。目が白っぽく濁ったり、瞳孔が開いたままになっていないか注意が必要です。 - 頭蓋顔面奇形(バーミーズ頭部欠損症):
アメリカン・バーミーズの一部系統に稀に見られる劣性遺伝疾患で、頭骨や顔面の形成異常を引き起こします(近年のブリーダーによる遺伝子検査の徹底により激減しています)。
4. バーミーズと暮らす飼育のコツとお手入れ
① 徹底した「24時間の室温管理」(冬の防寒対策)
被毛が極めて短く、アンダーコートがほとんどないため寒さに弱いです。
- 室温設定: 冬場はエアコンやペット用ヒーターを活用し、室温23〜25℃以上をキープしましょう。
- 保温ベッド: ドーム型ベッド、毛布、電気ホットカーペットを用意し、いつでも暖を取れる場所を作ってあげてください。
② 手間いらずの被毛ケア(週1回のブラッシング)
抜け毛が全猫種の中でも極めて少なく、毛玉ができる心配もありません。
- お手入れ方法: 週に1回程度、ラバーブラシや柔らかい獣毛ブラシで優しくマッサージするようにブラッシングします。
- ツヤ出し: 固く絞った濡れタオルやセーム革で毛並みに沿って拭いてあげると、サテン特有の美しい艶が一層引き立ちます。
③ 肥満防止と筋肉質な体型の維持
食欲が旺盛で早食いしやすいため、太り過ぎに注意が必要です。
- 計量給餌: 目分量ではなくキッチンスケールで毎日の給餌量を管理しましょう。
- 運動スペース: 筋肉質で運動能力が高いため、しっかり上下運動ができるキャットタワーを用意し、1日15分は飼い主がおもちゃで遊んであげましょう。
④ 毎日の触れ合いと孤独の防止
バーミーズにとって最大のストレスは「構ってもらえないこと」です。帰宅後はしっかり名前を呼び、膝に乗せて優しく撫でてあげる時間を必ず確保しましょう。
5. バーミーズを迎える方法と費用相場
迎える方法と価格の目安
- ペットショップ・ブリーダー: 20万円〜35万円前後(毛色、被毛の光沢、骨格のたくましさ、血統によって変動します)。
- 国内ブリーダーの現状: 日本国内での取扱頭数は限られており、希少種に分類されます。迎える際は、専門のキャッテリーやブリーダーへ事前に見学予約を入れるのが確実です。
- 保護猫・里親: 希少種のため保護猫で見つかる機会は稀ですが、成猫やリタイアキャット(繁殖引退猫)の里親募集が行われることがあります。
子猫を選ぶ際の重要チェックポイント
- 親猫の遺伝子検査(低カリウム血症): 両親猫が低カリウム血症(BHK)の遺伝子検査をクリア(陰性)しているかを必ずブリーダーに確認しましょう。
- 抱き心地と重み: 抱き上げたときに見た目以上にずっしりとした重みがあり、骨太で筋肉が引き締まっているか確認します。
- 目と鼻の清潔さ: 黄金色の瞳が澄んで目ヤニがないか、呼吸時に異音がしないかチェックしましょう。
まとめ:絹の温もりと黄金の瞳で家族を包み込む最高のパートナー
サテンのように滑らかな被毛を撫でながら、ずっしりと温かい体を腕の中に抱きしめる時間。バーミーズは、その優美な気品と、どこまでも真っ直ぐに注いでくれる深い家族愛で、日々の暮らしに極上の安らぎを届けてくれます。
寒さに配慮した暖かい環境を整え、たっぷりの愛情とスキンシップを注ぐことで、15年、20年と長く健やかな時間を共に分かち合うことができるでしょう。


