サテンシルクのように滑らかな極上の被毛に、抱き上げるとずっしりと手応えを感じる引き締まった筋肉質のボディ。そして、エキゾチックな魅力を湛えて黄金色に輝く大きな瞳――。「アジアン(Asian / アジアンショートヘア)」は、イギリスで絶大な人気を誇るバーミーズの優美な骨格と温厚な気質をベースに、多彩な毛色やタビー(縞模様)の美しさを追求して確立された英国生まれの洗練された品種です。
1980年代初頭、イギリスで偶発的に誕生したシルバーの美しい猫「バーミラ」をきっかけに、ブリーダーたちは「バーミーズと同じ体型・性格を持ちながら、伝統的なセーブル等に限られないあらゆる色彩表現を持つグループ」の育種計画をスタートさせました。この一大プロジェクトから生まれたのが「アジアン・グループ(Asian Group)」であり、その中心を担う短毛種が本種「アジアン(アジアンショートヘア)」です。
バーミーズ譲りの深い愛情深さを持ち、人のそばにいることを何より好む甘えん坊。自己主張で激しく騒ぐこともなく、穏やかで知性的なコミュニケーションを取ってくれるため、集合住宅やファミリー層にとっても理想的なパートナーとなります。
この記事では、アジアン(アジアンショートヘア)の誕生の歴史、外見的特徴、人懐っこく愛らしい性格、平均寿命、注意したい健康管理、そして快適に暮らすための飼育のコツまで詳しく解説します。
アジアン(アジアンショートヘア)の基本データ

| 項目 | 詳細データ |
|---|---|
| 原産国 | イギリス |
| 体型タイプ | セミフォーリン(引き締まった筋肉質で無駄がなく、中肉中背のバランス体型) |
| 体重の目安 | オス:約4.0kg〜5.5kg / メス:約3.0kg〜4.5kg(中型種) |
| 平均寿命 | 約12歳〜15歳 |
| 被毛タイプ | 短毛種(アンダーコートが極めて薄く、体に吸い付くようなサテン質感のショートコート) |
| 公認団体 | GCCF(英国猫愛好家統括協議会)、LOOF(フランス)等 |
| 鳴き声の大きさ | 普通〜やや控えめ(柔らかく優しい声で、穏やかにおしゃべりする) |
| 飼いやすさ目安 | ★★★★★(人懐っこく穏やかで無駄鳴きが少ない。抜け毛ケアも容易で初心者や集合住宅に最適) |
1. アジアン(アジアンショートヘア)の特徴と魅力
極上のサテン光沢と「多彩なカラーバリエーション」
アジアン最大の特徴は、バーミーズ特有のセピア(セーブル)や淡い単色にとどまらない、圧巻のカラー&パターンの多様性です。
- シルクのような極上の手触り: アンダーコートがほとんどないため、毛並みは体にぴったりと密着し、撫でると上質なサテンやビロードに触れているかのような滑らかな感触を味わえます。
- 多彩なカテゴリー展開:
- アジアン・セルフ(Self): ブラック(ボンベイの英国基準と同等)、ブルー、チョコレート、ライラック、レッド、クリーム、キャラメル、アプリコットなどの美しい単色。
- アジアン・スモーク(Smoke): 毛の根元が白く、毛先にかけて濃いグラデーションが入る幻想的なスモークカラー。
- アジアン・タビー(Tabby): スポッテッド、クラシック、マッカレル、ティッキングなど鮮明な縞模様。
- バーミラ(Burmilla): シルバーの毛先に繊細なシェーディングが入るタイプ(アジアン・グループの創始種)。
金色に澄み渡る「エキゾチックなアーモンドアイ」
- 輝く瞳の色彩: 大きく丸みを帯びたアーモンド形の瞳を持ち、カラーは温かみのあるイエロー、アンバー(琥珀色)、ゴールドから、深いグリーンまで認められています。
- 穏やかで上品なくさび型ヘッド: 頭部は緩やかなカーブを描く短めのくさび形で、鼻筋には穏やかなブレイク(わずかなくぼみ)があります。耳は中型で先端がわずかに丸く、前方に適度な間隔を空けてついています。
重厚感としなやかさを併せ持つ「セミフォーリンボディ」
- 「レンガを包んだシルク」: 外見はすらりとして優美ですが、抱き上げると見た目以上にずっしりとした重みと引き締まった筋肉を感じられます。胸板は適度に厚く、均整の取れたアスリート体型です。
- 上品な足先と尾: 四肢は中くらいの長さでほっそりとしており、足先は愛らしいオーバル(卵型)。尾は付け根が適度に太く、先端に向かってスッと伸びるテーパーを描きます。
ルーツと歴史:1981年、イギリスでの運命的な出会いから
アジアンの歴史は、1981年にイギリス・ロンドンのミランダ・ビックフォード=スミス(Miranda Bickford-Smith)男爵夫人の邸宅で起きた偶然の出来事から始まりました。
夫人が飼っていたチンチラペルシャのオス「ジャマリ(Jamari)」と、ライラックカラーのバーミーズのメス「バンビー(Bambino)」が偶然交配し、4頭の魅力的なシルバーシェーデッドの子猫が誕生しました。この子猫たちが後に「バーミラ」と名付けられ、大絶賛を浴びることになります。
ブリーダーたちはこの成功を受け、「バーミーズの理想的な性格と体躯をベースに、ペルシャ由来の多彩な毛色やタビー模様をすべて網羅した新しい品種群を作ろう」と決意。慎重なブリーディング計画が進められ、1990年代にイギリスの最高峰登録団体であるGCCF(Governing Council of the Cat Fancy)において「アジアン(Asian)」として正式に認定されました。
2. アジアン(アジアンショートヘア)の性格と飼いやすさ
「家族の心を温める甘えん坊な親友」
バーミーズの血筋を色濃く引いているため、性格は驚くほど人懐っこく、どこまでも温厚で愛情深いです。
- ストーカー気質な甘えん坊: 人間のそばにいることが大好きで、飼い主が部屋を移動すると足元をトコトコとついて歩きます。ソファに座ればすぐに膝の上に乗り、大きなゴロゴロ音を立てて体を預けてきます。
- 知性あふれる遊び好き: 身体能力が高く知的好奇心が旺盛です。おもちゃを投げると咥えて持ってくる「フェッチ(取ってこい)」遊びを覚えたり、知育トイの仕掛けを器用に解いたりと、犬のように賢い一面を見せます。
- 穏やかなおしゃべり: シャムほど声が大きくなく、要求鳴きで騒ぎ立てることはありません。優しく柔らかな美声で「クルル」「ミャウ」と挨拶するように語りかけてくれます。
オスとメスの性格の違い
- オス: 4.0〜5.5kg前後。筋肉質で活発。天真爛漫で甘えん坊な気質が前面に出やすく、家族全員に対して無邪気に体をすり寄せて甘えてきます。
- メス: 3.0〜4.5kg前後とオスよりひと回り小柄。知性的で観察力に優れ、家族の空気を読みながら甘えたいタイミングで静かに寄り添ってくる、品のある甘え方をします。
初心者や一人暮らし、子供・先住ペットとの相性
- 初心者・ファミリー: 攻撃性が極めて低く辛抱強いため、初めて猫を迎える家庭や小さな子どものいるご家庭にも適しています。
- 一人暮らし: 穏やかにお留守番できますが、人とのスキンシップを好むため、長時間の留守番が続く場合は帰宅後にたっぷり名前を呼んで遊んであげましょう。
- 多頭飼い: 非常に平和主義で社交性が高いため、相性の良い先住猫や温厚な犬とも争うことなくすぐに良好な関係を築けます。
3. アジアン(アジアンショートヘア)の平均寿命とかかりやすい病気
アジアン(アジアンショートヘア)の平均寿命は約12歳〜15歳です。基本的には頑健で活発な品種ですが、交配ルーツであるバーミーズやペルシャに由来するいくつかの体質的傾向に配慮が必要です。
注意したい病気と健康トラブル
- 多発性嚢胞腎(PKD):
初期の交配でペルシャの血統が入っているため、腎臓に嚢胞ができる遺伝性疾患(PKD)のリスクがあります。現代の公認ブリーダーはDNA検査を行っているため、迎える際は親猫の検査クリアを確認しましょう。 - 尿路結石症(FLUTD):
筋肉質で活動的な猫全般のリスクとして、冬場に飲水量が落ちると膀胱炎やストルバイト結石などを起こしやすくなります。新鮮な水を複数箇所に用意しましょう。 - 歯周病・デンタルケア:
やや短めのマズルを持つため歯並びや歯石の沈着に注意が必要です。子猫の頃からの歯磨き習慣をつけましょう。 - 過度の肥満(シニア期):
食欲旺盛な個体が多く、運動量が落ち着く成猫・シニア期にカロリー過多になると関節や内臓に負担がかかります。食事量の計量管理が大切です。 - 肥大型心筋症(HCM):
猫全般に共通する健康リスクとして、定期的な健康診断(聴診・エコー検査)が推奨されます。
4. アジアン(アジアンショートヘア)と暮らす飼育のコツとお手入れ
① 驚くほど簡単な被毛ケア(週1回のブラッシング)
下毛(アンダーコート)がほとんどないシングルコートのため、抜け毛が少なく毛玉の心配もありません。
- 普段のお手入れ: 週に1回程度、ラバーブラシや獣毛ブラシで優しく撫でるようにブラッシングして抜け毛を取り除きます。
- セーム革磨き: 固く絞った温かい蒸しタオルやセーム革で毛並みに沿って拭いてあげると、サテン特有の美しい艶が一層引き立ちます。
② 身体能力を発揮できる立体運動空間
- 頑丈なキャットタワー: 筋肉質で跳躍力が高いため、上下運動ができる安定したキャットタワーを用意しましょう。
- 1日15分のスキンシップ遊び: ボールやじゃらしを使ったハンティング遊びを取り入れ、狩猟本能を満たしながら筋肉量をキープしてあげてください。
③ 寒さへの配慮(室温22〜24℃)
- 被毛が非常に薄いため、寒さにはやや敏感です。冬場はエアコンを活用し、潜り込めるドーム型ベッドや毛布を用意して快適な室温を保ちましょう。
5. アジアン(アジアンショートヘア)を迎える方法と世界的な現状
迎える方法と現状
- 英国・欧州中心の公認種: 主にイギリス(GCCF)やフランス(LOOF)を中心に血統が保存・育成されています。ヨーロッパでは知名度が高い一方、世界的全体で見ると希少な部類に入ります。
- 日本国内での入手難易度: 日本国内での取扱キャッテリーは極めて少なく、ペットショップで見かけることはまずありません。迎える際は、イギリスなどの公認キャッテリーからの正規輸入を検討する必要があります。
まとめ:サテンの輝きをまとい、黄金の瞳で寄り添う至高の同居人
滑らかなサテンシルクの被毛をすり寄せ、黄金色に輝くアーモンドアイで優しく見つめながら腕の中で喉を鳴らすアジアン(アジアンショートヘア)。バーミーズの深い情愛と多彩な色彩美が溶け合ったその姿は、日々の暮らしに尽きない温もりと優雅な安らぎをもたらしてくれます。
丁寧なスキンシップとあたたかな対話を重ねてあげることで、生涯にわたるかけがえのない最愛のパートナーとして、長く幸せな日々を共に歩んでいくことができるでしょう。


